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佐藤 弘泰

null環境微生物学のなかでも下水処理に関係するものは、身近にありながら分かっていないことばかりです。未知の多い世界がこれほど身近にあるということは、ある種驚きでもあり、非常に興味深いことでもあります。

その下水処理場の微生物世界ですが、最近遺伝子解析の技術が大幅に進歩し、近年ようやく詳しくはっきりと知ることができるようになってきました。しかし、今まで全く知ることさえできなかったものにようやく触れることができるようになったという程度です。見えたものを見たままに報告することは当然大事ではあるのですが、大事なのはその背後にあるさまざまな背景をあぶり出し、何らかの文脈の中で理解することです。それができるようになれば、次にどうなるかを予測できるでしょうし、あるいは、自分の思う方向に導いたりすることもできるかもしれません。

最新の遺伝子解析技術を用いて下水処理場の微生物世界を明らかにすることは、当研究室の大きなテーマの一つです。実験をする技術も必要ですが、データを解析する技術・能力も必要になります。そのあたりは、研究室に入ってからでも学ぶことができますし、また、身につけることができれば社会に出てから必ず役に立つでしょう。

私は基礎研究も好きですが、技術を作ることも好きです。今、夢中になっていることは、下水管の中での浄化技術です。これまでは、下水を下水管で集めて、下水処理場で処理するのが当たり前でした。下水管はあくまで下水を滞り無く輸送するための装置にすぎませんでした。しかし、下水管のなかでも、微生物が働いて、多少は浄化が進むのです。それをもっと促進できないか。もしも促進することができたら、もしかしたら、下水処理場なんかいらなくなるかもしれないし、そこまでいかなくても、下水処理にかかる費用やエネルギーをだいぶ減らすことができるかもしれない。もちろん災害対策としても有効です。

夢のような研究に、そして、今日とは違う明日をつくるような研究に、取り組んでみませんか?

 

主な研究プロジェクト

「微生物ハライッパイ」プロジェクト

 下水処理場の余剰汚泥中の微生物は、曝気槽で十分に曝気されたあとなのでお腹がぺこぺこなのではないかと思われます。そういうお腹ぺこぺこの微生物を汚泥処理に送る前に、食事をさせてあげたらどうかなぁというプロジェクトです。お腹がぺこぺこだから、活発に食事をしてくれる(=下廃水を処理してくれる)でしょうし、その際、摂取された有機物はあまり酸化分解されず微生物の細胞内に蓄積されます。その状態で汚泥を回収し汚泥処理系に送るようにすれば、いわば、下水中の有機成分=バイオマスエネルギー資源を酸化分解するのではなく汚泥として固定化・回収できることになります。好気性処理のための動力を削減できるだけでなく、メタンガスなどの回収量が増えることが期待できます。
 下水処理のエネルギー効率を高める新しい発想として、鋭意研究しています。
 

下水管内で下水処理

 通常、下水管は下水を集めるための装置であり、下水を処理する装置ではありません。下水処理は、下水管の末端に設けた下水処理場でおこなっています。下水管の役割は、下水を遅滞なく処理場に送り届けることです。
 しかし、下水管内、特に上流末端の方の下水管の中は、管底をチョロチョロと水が流れているだけで、管内の空間の大部分はただの空隙になっています。有効に活用されていない、といって糾弾するつもりはないのですが、何か活用できないかと思います。
 さて、下水管の特に上流部では、下水の流下は間欠的になります。なぜって、みなさんはいつどのように下水に水を流していますか?トイレに行った時とか皿を洗う時とかだけですよね?そのような下水の流下が間欠的であるという性質を考えると、もしかすると下水管の表面に住み着いている微生物はこんな生活をしていないでしょうか?
 
「下水が流れているとき=食事の時間」
「下水が流れ去ってしまったとき=下水管内の空気にさらされる時間=下水管内の空気中の酸素を利用して酸化分解する時間」
 
 本当にそんなことが起きているかどうか、わかりませんが、私たちは積水化学工業株式会社と共同研究し、同社が開発した新型下水管の性能評価をしました。その新型下水管は管内に微生物を保持する担体を備えており、下水の流量変動に応じて担体は下水と空気に交互にさらされます。その下水管内では管長1メートルあたり10〜20g/日の酸素が消費されることが確認されました。一人の人が排出する有機物量はBODとして60g程度なので、うまくいけば一人分の下水を数メートルの管延長で処理できる計算となります。
 
 下水管内での下水処理を実用レベルにまで高めることができれば、例えば下水処理場を分散配置して処理水の再利用を促進することもできるでしょうし、下水処理場が不要(あるいはごく小規模で済む)ようになり、下水道システムの建設や維持に必要なコストを大幅に提言できるかもしれません。下水処理を自然の力で行うので、省エネルギーでもあります。
 今までの常識をまったく打ち破る研究なので、実用化への道は容易ではありませんが、それだけにやりがいのある研究です。
 

OTUMAMi、環境微生物学

 次世代シークエンサーを用いて微生物群集構造やその変化を解析する研究が増えてきました。OTUMAMiは、そうした研究を支援するためのツールで、FileMaker Proというデータベースソフトウェアを用いて佐藤が開発したものです。OTUMAMiの開発そのものも私にとっては大きなプロジェクトなのではありますが、しかし、もっと大きな希望は、OTUMAMiを用いて(あるいは用いなくても)水処理プロセスや環境中の微生物群集構造についての理解が進むことです。OTUMAMiは、微生物群集構造の変化を次世代シークエンサーを用いて解析するために必要な多くの機能(特に生のデータを直観的に理解しやすいように見せる機能)を備えています。
 
 微生物の世界は高等生物の世界と同じくらい精妙なのではないかと私は考えています。知能はもちろん持っていないとはいえ、私たちの一生(70年程度)の間に何千回、何万回も細胞分裂できます。環境の変動に対して命を張って適応を試み、成功したものだけが子孫を残すことができるのです。簡単なわけがない。しかし、微生物の世界で何が起きているのか、微生物そのものを調べることもこれまで容易ではありませんでした。次世代シークエンサーは、微生物の世界で何が起きているのか解き明かす情報をもたらしてくれるでしょう。何がその変化をもたらしているのか知るためには、まだまだ想像力をめぐらして、試行錯誤しながら注意深く原因を調べていかなければなりません。しかしそれだけに、学問として刺激的で面白いはずです。考えてみれば、高等生物の世界でさえ、私たち人類は十分に知識を持っているわけではありません。
 

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